Activity Report

CTIC 通信第277号:晴天の霹靂

2024年05月08日

在留資格のない親のもとに生まれたため、日本で教育を受け、日本語しか話せないにもかかわらず、強制送還の対象になっている子どもたちがいます。どんなに成績が優秀でも、スポーツができても、在留資格を得ることができない限りは就労が許可されないため、卒業後の生活を思い描くことができず、将来を語り合う同級生の輪には入れません。それどころか、ある日、言葉のわからない親の生まれた国に強制送還されるかもしれないという恐怖を、友達にも打ち明けられずに抱えています。

CTICでは長年にわたり、修道会、信徒の皆さまの協力を得て、そんな子どもたちの生活や学びの機会を支えてきました。岡田大司教様、菊地大司教様は「この子どもたちの健やかな成長と未来のために在留資格を付与してください」と法務大臣宛の「上申書」を何度も書いてくださいました。しかし、事態は変わらないまま時間が過ぎていました。

昨年8月、そんな私たちのもとに驚くべきニュースが舞い込んできました。法務大臣が「今回に限り」と前置きしながらも、「日本で生まれながら強制退去処分となっている子どものうち、改正入管難民法の施行時(昨年6月の公布から1年以内)までに小中高で学んでいる子どもを対象に、一定の条件を満たせば、家族とともに『在留特別許可』を与え、滞在を認める(ビザを与える)」と発表したのです。

発表から現在までに、CTIC関係者17人にビザが付与され、4人にも間もなく付与される見込みです。彼らは皆、口を揃えて「これまでありがとう。いつか恩返しをします」と語っています。これまで彼らを支えてくださった皆様に心から感謝申し上げます。

朝三暮四

先行きが真っ暗だった家族に未来が開けたことは大きな喜びなのですが、喜んでばかりはいられない問題があります。 何より問題なのは、今回の在留特別許可が、「子どもの人権尊重」を基盤に進められた議論の結果ではなく、「難民認定申請3回目以降の人については強制送還できる」という法改正の議論の中で出てきたものだということです。まず200~300人の子どもとその家族に在留特別許可を与え、改正入管難民法施行後に多くの難民申請者や非正規滞在者が送還されるようになるとしたら、とても喜んではいられません。

次に今回の措置が「今回限り」と強調されていることです。つまり「将来的に同じような子どもが存在するようになったとしても、今回のような措置は行わない」と宣言している点です。

そして、今回の在留特別許可から「不法入国の親」が除外されているということも暗い影を落としています。この15年間、入管は不法入国の親に対して「親が帰国すれば子どもにビザを与える」と親の帰国を強く求めてきました。今、ビザをもらった子どもたちは、自分たちのビザと引き換えに親が強制送還され、難病を患っている親が医療の十分でない国籍国で治療できなくなること、幼い妹や弟が親と会えなくなること、祖国で親が迫害されることをとても恐れています。

神の似姿としてつくられた一人ひとりの人間の尊厳が守られる社会となるため、カトリック教会は常に思慮深く毅然と働き続けることを求められています。

相談員 大迫こずえ

 

東京で暮らすミャンマー出身の家族。子どもの健やかな成長を願う気持ちは世界共通(写真は本文の内容と関係ありません)