活動報告 Activity Report
CTIC通信第276号:永住できない永住者
2024年04月08日
何人かの若者に「外国籍の友人から『永住者の在留資格が取れた』と聞いたらどう思う?」と質問してみました。「おめでとう。これで安心だねって思う」「ずっと日本に居るつもりなんだ。祖国の家族は寂しくないのかと思う」などの答えが返って来ました。「永住者」ですから、「ずっと日本に住む(住める)人」と理解するのは当然でしょう。ある法律事務所のホームページでは「永住者」の在留資格について、「永住者とは法務大臣が永住を認める者で、生活の本拠を生涯日本に置く者のことを言います」と説明しています。
しかし、今、その在留資格が揺らいでいます。
2019年11月、「施策の参考にする」という目的で行われた世論調査で、永住外国人について次のような設問がありました。「永住者数を多いと思いますか」「永住許可を取り消す制度を設けるとしたら、どのような場合に取り消すべきだと思いますか」。 回答として「税金や社会保険料を納めなくなった場合」「生活保護を受けるようになった場合」「日本人と結婚して通常より早く永住を許可された外国人がその後すぐに離婚した場合」などの選択肢が示され、それぞれ73.2%、39.8%、38.3%の人が永住資格取り消しに「賛成」と答えました。
納税や社会保険料の支払いが、日本に住むすべての人にとって大切な義務であることは言うまでもありません。しかし、どんな人であっても、それまでの安定していた生活が崩れることはありうるのです。前年度までそれなりの収入があったとしても、失業や病気、高齢化、そして事業の不調などにより、前年度の収入額に対して課せられる税の納付が難しくなることは誰にでも起こりうることでしょう。場合によっては、生活保護を受給して最低限の生活を維持せざるを得なくなるかもしれません。婚姻関係の破綻についても、日本人の配偶者の裏切りや暴力に起因した、外国人配偶者が望まない結果であるかもしれないのです。「そのような状況にある永住者から永住資格を取り上げていいと思いますか」というのがこの設問なのですが、前述のとおり、少なくない数の日本人はそれに「はい」と答えたということです。
そして、これらは世論調査にとどまらず、今国会において「法改正」という形で具体化されようとしています。どのような時に永住取消が行われるかはまだ明らかにされていませんが、「永住者」という在留資格が、「永住」という安定的なものでなく、条件によって取り消されるものになることは確かです。ある永住者は「もしこれが本当に日本人の外国人永住者に対する意識であるのならとても寂しく感じます」と話していました。
私たちは「外国籍」の人たちをどのような存在と考え、どのように彼らと日本で暮らしていきたいのでしょう。本質的な問題を再考し、答えを出さなければならない時が来ているのです。
相談員 大迫こずえ
地域の行事で祖国の料理をふるまうウガンダ出身者(写真は本文の内容と関係ありません)