活動報告 Activity Report
CTIC通信第268号:共に生きる町
2023年06月09日
2023年4月2日、墨田区のある町会のお花見の席で、町会長からウガンダ人8人に対して「感謝状」が贈られました。ウガンダ出身者のボランティアグループが2017年2月から続けて来た、月に一度の町内清掃活動が評価されてのことです。満開の桜の咲く中、町内の方々の温かい言葉と拍手を受けながら、額に入った賞状と金一封が授与されました。
その地域に多く住むウガンダの方々とCTICとの交流は、2016年の春に、あるウガンダ人から労働契約についての相談を受けたことから始まりました。その後、7~8人のメンバーと定期的に集まって、日本語や日本の社会制度、労働制度についての勉強会を行うようになりました。ある日勉強会後のお茶の席で、メンバーの一人が「自分たちは地域から受け入れられていない」「あの辺に住んでいる『外国人』でしかない」「会社でも差別されている」という不満の声を漏らしました。そして、他のメンバーが「自分達だって住民税を払っているのに…」と続けたのです。それに対して今度は私が「人間の住む町は住民税だけで出来上がるものじゃないよ。多くの住人が、長年、様々な形で尽力して、苦労して、時には戦って、町は作り上げられている。その人たちと同じようになりたいのなら、あなたたちも町のために積極的に何かしないとだめだよ」と勢いよく返したところ、「するよ!何をすればいい?」と、皆がとても前向きに声を上げたのが今回表彰の対象となった清掃活動の始まりでした。私は墨田区役所の地域活動推進課に相談に行きました。そこで紹介された町会長さんは親身になってたくさんのアイデアとアドバイスを下さいました。その結果、町会が何かと町の行事に利用している神社とその周辺の道路の清掃を行うことになったのです。
6年もの長い間には、気持ちの良い晴れの日、雨の日、雪の日、蒸し暑く蚊に悩まされる真夏の日など、さまざまな天候の日があります。また、皆それぞれの生活、やりたいこともあります。それでも、欠かさず続けることは簡単なことではありません。始まりの時から無欠席のCさんには喘息の持病があり、寒い季節には体調がすぐれないのですが、楽しみにしていたクリスマスパーティーへの招待を断ってでも、翌日のボランティア活動を優先しました。また、約一年間、九州に出稼ぎに行っていたAさんとSさんは、その期間、何度か清掃活動に参加するために東京に戻ってきました。Jさんは妊娠中も、そして出産後には赤ちゃんを連れて参加していました。今回表彰された8名は、ほぼ最初の時から活動を続けている人達でした。
いつの間にか彼らは、台風の翌日には、朝早くから神社とその周辺の様子を見に行き、「自分の町」の樹木や道路の様子を案ずる存在になっています。そして、「ウガンダ人の清掃ボランティア活動」は、「ウガンダ人」に限らず、かつてJICAでウガンダに滞在したことのある高等学校の先生、区議会議員さん、地域の警察署の方々、新聞記者さん、そしてそのご家族をも巻き込んで、その活動の輪が広がっています。
ただ黙々と草を抜き、落ち葉を集め拾い、建物と水回りを清める作業が、時間の経過の中で、人を、社会を、静かにそして確実に変えて行っているように感じています。
相談員
大迫こずえ