活動報告 Activity Report
CTIC通信第263号:支援を卒業していく人々
2022年12月06日
コロナが猛威を振るっていた昨年に比べると、食料支援に頼る人の数もだいぶ減ってきました。それだけに、今なお食料支援に頼らざるを得ない人々の置かれた状況もよりはっきりと見えてくる昨今です。
「ありがとうございました!」と食料支援を卒業し、希望をもって新たに歩みだす人たちの笑顔はスタッフにとっても嬉しいものです。生活に困窮する外国籍の方を対象とした食料支援は自立に向けられていて、毎月収入を得て生活できるようになれば支援は終了となります。収入、世帯人数、家賃や借金の有無などが目安となりますが、それ以上に「もう大丈夫です」という本人の意志も大切だと感じています。仕事が決まった時点で自ら支援の終了を申し出る人もいれば、安定するまで支援の継続を求める人もいます。本人や家族が病気がちであったり、仕事が不安定であったりなど、何か不安要素がある場合は、ある程度の収入があってもしばらく支援を継続する方がいいこともあります。
今年の夏に支援を終了したカメルーンの男性もそのことを教えてくれた一人でした。就労が許可されなかった数年間支援を必要としていましたが、この春から小学校の英語の先生として働き始めることができました。私が関わった一年半の間、試練の中にありながらいつも前向きで感謝の言葉を口にしていた彼が一度だけ顔を曇らせたことがあります。それは支援の終了を提案したときでした。夫婦ともに安定した仕事を得、経済的には問題ないと判断した上でのことでしたが、その時彼の口から「もう大丈夫です」という言葉は出ませんでした。2か月先を目処にすることに口では承諾しながらもどこか不安げな表情がひっかかり、他のスタッフとも相談し、夏一杯は待つことにしました。9月の初め、仕事帰りに訪れた彼に「今回が最後で大丈夫かな?」と切り出してみると、今度は「もちろんです!なんとかやっていけると思う、本当にありがとう!」という言葉が返ってきました。明るい笑顔で語る言葉には、数か月前にはなかった力強さが感じられました。「ここは自分の家だから娘が成長したらいつか連れてきたい」と溢れる感謝でCTICを後にする姿は、その人の声に耳を傾けつつ共に歩む大切さを教えてくれるものでした。
10月に食料支援を卒業した方
このように晴れて仕事に就き、希望をもって食料支援を卒業していく人や、ある程度の明るい展望を描ける人もいますが、在留資格がなく就労が許可されない人たちは、はっきりとした希望が見えない中を歩み続けています。長期に渡って食料を誰かに頼らざるを得ない状況は精神的にも追い込まれがちです。「わたしはついていなかった」、「あまり幸せではなかった」と人生を振り返る心の奥に光が訪れるよう願いつつ、少しでも心温まる交わりを心がけていきたいと思います。
皆さまからのご支援によって多くの方の生活が支えられていることに感謝を込めて。
CTICスタッフ・ 師イエズス修道女会
右田紋子