Activity Report

CTIC通信第261号

2022年10月07日

夏の休暇中、CTICの活動にボランティアとして、わずかではありますがお手伝いをさせていただきました。その中で、在留特別許可を求めている方への家庭訪問に同伴させていただく機会がありました。

そのご家族が在留許可を求めている理由は、書面上では父親が重い持病を持っていて命の危険があるからということでした。書面を見る限りでは、食料援助、医療援助、そして手続きに関する援助を行えば、それでいいように思われたのですが、実際にご家庭を訪問すると、私が考えていた「援助」のあり方が、いかに現実を捉え損ねていたものであるかを思い知らされました。

まず、宗教上の理由で食べられないものがあること、日本で生まれた子どもたちは両親の母国語をあまり話すことができないということ、またその子どもたちが日本の学校に通うために必要な備品を買う資金がないこと、そして、そのような中でも彼らは、この国に根を張ってこれまで既に10年以上も生きてきており、他者への思いやりに満ちた人たちであるということ、そんなことが直接の訪問によって少しずつ見えてきました。

食料援助に関しても、書面上で必要ないと答えていた品目について、シスターが根気強く聞き取りを行うと、必ずしも本当に必要ないからというわけではなく、自分たちよりも困った人に回してほしいという思いから断っていたことが判明しました。彼らが日本に留まりたいと思っている理由も、単純に医療のことで割り切れる話ではありませんでした。子供の幸せを願う母親の気持ち、また同じように在留許可をめぐって苦しむ人たちと連帯しようとする父親の気持ちが複雑に絡み合い、一つの想いになっていたのです。

「援助」と言う言葉を聞く時、私は「何ができるか」を考え、問題のカテゴライズを考えましたが、今回の体験を経て、キリストの愛に根ざした活動をする時、本当に大切なことはそこではなく、一人ひとりの個別の事情に向き合い、共に悩みながら、心の温もりが伝わる支援を行うことなのだろうと、改めて実感致しました。そのような関わりは、エネルギーが必要で、効率も悪く、目立った成果にはなかなかつながりませんが、だからこそカトリック教会にしかできない、愛の奉仕であろうと思います。今回の経験を踏まえて、私自身も一人ひとりの声に直に耳を傾ける「共に歩む」人になる道を歩んで参りたいと思います。

冨田 聡

家庭訪問を行ったバングラデシュのご家族と一緒に。右端が冨田神学生。左隣はレデンプトール修道会管区長の井上武神父。前列はCTICスタッフ