Activity Report

CTICの役割葛西教会で活動して思うこと 

2022年09月16日

日本カトリック難民移住移動者委員会発行の「J-CARMニュース6月号(PDF)」(10ページ)にCTICの活動を紹介する記事が掲載されました。

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カトリック東京国際センター(CTIC)は東京大司教区が運営する組織ですので、外国人にかかわる課題について、教区の皆さんとともに働き、皆さんに奉仕することがその使命です。

2021年3月、カトリック葛西教会から要請を受け、葛西教会の「ベトナム人支援」に集まっている方々の相談を受けることになりました。この活動はコロナ禍、仕事が減り、空腹を抱えている1人の技能実習生に教会で働くシスターが声をかけ、修道院にあるおにぎりをふるまったことから始まったものです。その後、口コミで助けを求めて集るベトナム人が増え、多くの人々を巻き込んで活動の幅が広がっていました。

相談に来るのは、主に10代~20代の「技能実習生」、「留学生」、「技術・人文・国際」の在留資格を持って就労している方々です。彼らの多くは祖国での社会経験が浅く、「日本に来て初めて働く」という人も少なくありません。祖国の親元で社会経験を積む時期に「外国日本」で働くのですから、監理組合のフォローがある技能実習生はまだしも(監理組合がそこそこ機能している場合ですが)、留学生や来日数年で就労している「技術・人文・国際」の人たちが祖国にない複雑な制度の只中で、何事もなく生活していることが奇跡のようです。ですから、労働問題、在留資格の他に、学校の選び方、書類の書き方、病院での受診の仕方、健康保険制度のこと、郵便の投函の方法、転職の仕方など、生活のありとあらゆる出来事が相談のテーマとして寄せられます。

3人の実習生が次々に妊娠した時には頭を抱えました。3人とも希望通りに帰国し、出産できたことは何よりですが、同じ会社で3人の実習生を軽作業に異動させ、帰国便が飛ばない時期に帰国させなければならなかった会社や監理団体は大変だったことでしょう。拾ったSuica(ICカード)を所持していたことで逮捕された青年の場合、突然姿を消したので警察署で見つけるまでは気が気ではありませんでした。未熟さゆえに起きる問題は少なくありません。幸い、通訳のベトナム出身のご夫婦が、ベトナムと日本の社会経験豊かな方で、ご自分の体験談などを交えて丁寧に話してくださるので、彼らがことの道理を理解する大きな助けになっています。

現在、在留外国人の30%近くが18歳~28歳の若者であること考えると、これまでのように相談窓口を設け、専門家を交えての相談会以前に、身近な手続きや制度について気軽に尋ねることのできる「安心できる場」と、どう生きて行くべきかを学ぶ「信頼できる人間関係」が必要とされていると痛感するこの頃です。カトリック教会だからこそできる、そして行わなければならない外国人支援があるように思えてなりません。

一つのエピソードを紹介します。12月の寒い朝。小平教会の神父様が、たくさんの大根とハヤトウリをCTIC事務所に届けて下さいました。信徒の方が持って来てくれたものだそうです。ベトナム人はハヤトウリ好きなので、葛西教会にその写真を送ったところ、「これはベトナム人の野菜です」とコミュニティが大反応!直ぐに信徒の1人が「私が運びましょう」と申し出てくれ、大根とハヤトウリが昼過ぎには教会に届けられました。その後、信徒の方々が技能実習生や苦学留学生らのお宅に配達。夜にはCTICにハヤトウリで作られた夕食の写真とお礼のメッセージが届きました。翌日、大根はベトナムのナマスになり、クリスマスの日にベトナムの方々に配られ、小平教会にも宅配便で届けられました。小平教会の方々は、この一連の出来事をとても喜び、外国人支援の輪が広がっているとのことです。

CTICには教区の方々から多くの支援が寄せられます。32年の活動を通して蓄積された情報、知識、ネットワークがあります。この教区の財産を、これまでは主にCTICという現場で利用してきました。葛西教会の、相談者の実生活に近い場所で相談を受けながら、それら教区の財産を小教区に提供することの重要性を痛感しています。また、小教区同士をつなぐ外国人支援の拠点の役割をCTICが果たすことの必要性も感じています。小さな組織であるCTICが、それをどのように実現できるのか、祈りと熟慮が必要な課題です。

相談担当 大迫こずえ

 

いただいた大根とハヤトウリ

 

ハヤトウリで作った一品