Activity Report

CTIC通信第259号:難民を思う

2022年07月07日

ここ数年、祖国を逃れてきた方々への関心が高まっています。CTICにも「難民と交流したいので出会う機会を作ってください」「難民の話を直接聞かせてください」というリクエストが届きます。また、メディア関係者、フリーのジャーナリストを名乗る方々からの、活動現場の取材や撮影のお問合せも少なくありません。祖国を逃れてきた人たちの苦境をより具体的に知り、正確に伝えたい、支援したいという思いからなのだとは分かるのですが、そのご要望にお応えすることは簡単ではありません。難民及び難民申請者は、「命の危険から逃れてきた背景」を持っており、日本においても、安心な状況にはないからです。

難民申請者が、日本においてもそのようなリスクを感じ、緊張感を持って暮らしていることを初めて知ったのは、南アジアの出身のAさんの手続きに関わった時のことでした。当時、彼女は日本での生活が10年以上になっていたのですが、日本に在留登録している同国人との交流はほとんどなく、同国人を見かけても一切話をしない、母国語で話しかけられても分からないふりをしていると言ったのです。祖国での自分の立場や迫害に至った属性が、どこで誰に知られることになり、その情報がどのように流れるか分からないからとのことでした。

また、あるアフリカ出身の方は、「日本の方は、私がB国出身であることを知ると、B国の知り合いを紹介しようとします。親切心からであることはわかるのですが、私はB国のある政治グループに所属していたために命を狙われ、日本に逃れて来た難民です。日本にいるB国人の中には、敵対するグループの方々もいることを忘れないで欲しいです。」と話していました。

難民の方々に危険が及ばない方法で彼らを正しく紹介し、多くの方々にご理解いただくためにはどのようなことに留意すればよいのでしょう。 日本で20年以上難民支援を行っているNPO法人難民支援協会がこのたび発行した「難民の報道に関するガイドブック」がとても参考になります。

海外メディアの報道が母国の関係者に知られ、家族に危険が及んだ、報道のリスクが十分に認識されない中、難民の出身地域でも放送されてしまった、入管に個人情報が公表されてしまった、ヘイトスピーチの対象となってしまったなど、事例を紹介しながら、難民当事者や母国にいる家族・関係者が持つリスクが丁寧に説明さています。これらは、報道に携わるメディア関係者だけでなく、SNSへの投稿、難民を支援するイベントや講演会などの企画においても、同じように求められる配慮だと思います。CTICでもこのガイドブックを参考に、難民の方々への支援の在り方を、今一度見直したいと思っています。

 

※「難民の報道に関するガイドブック」の詳細はこちら(認定NPO法人難民支援協会HP。リンク先からガイドブックをダウンロードすることもできます)。