活動報告 Activity Report
CTIC通信第252号:ワクチン接種申請のお手伝い
2021年11月01日
この原稿を書いている10月初めの段階では、新型コロナウイルスの感染者は減少しています。予断は許しませんが、多くの人がワクチン接種をした効果もあると報じられています。今回良かったのは、厚生労働省が住民票のない方々も希望者にはワクチン接種をすると通達を出したことでした。住民票がない人の中には、在留資格がない仮放免の方や許可された在留期間が3 か月以下(更新の可能性はあり)の外国籍の方が含まれます。病気の感染は在留資格に関係なく広がるわけですから、この決定は感染予防の観点から当然のこととは言え、今まで在留資格のない人たちを存在しない人のように扱い、ほとんどの公的サービスから排除してきた日本の政府の姿勢を考えれば、非常に意義深い決定だったように思います。ただ、政府がそのように決定したからといって、当事者に自動的に接種券(クーポン券)が送られてくるわけではありませんし、自分たちも接種可能なのだという情報が伝わるということもほとんどありません。そこでCTICでは6月から9月にかけて、仮放免や在留期間3か月以下(難民申請中など)の方たちのワクチン接種の手続きをお手伝いすることになりました。
きっかけは、一人の教区の神父様からの問い合わせでした。その神父様は、ご自分の司祭館で数年にわたり仮放免の方に住居を提供されていて、その方がワクチン接種する方法を探しておられたわけです。そこからCTICの緊急食料支援に来られている方々にも、ワクチンの接種について必要ならお手伝いするようにしました。ご存じのようにワクチン接種業務を実際に担当するのは各市区町村です。どのような手続きでワクチン接種券を送ってもらえるかはそれぞれの区役所や市役所に個別に問合せなければなりません。そして、問合せ窓口の方が入管行政についてご存じであるわけではないので、「仮放免者」とは何か、在留資格があっても住民票がない人について、その人たちも接種できると厚労省から通達が出ているなどの説明からしなければなりませんでした。また、申請方法は概ね役所の指示する必要書類をそろえて担当部署に郵送するという手順でしたが、宛先にしても、「葛飾区健康部保健予防課新型コロナ予防接種担当係」というように長いわけです。そういうわけで仮放免者が自分で役所に電話をして、申請手順を聞き、書類を郵送するまでには大変ハードルが高いのが現状でした。また、接種券が送られてから医療機関で接種の予約をするまでもご存じのように一苦労なので、中にはスタッフが医療機関の予約をして、病院の地図を付け、接種会場での提出書類のリストを持たせたケースもありました。そこまでするのは過保護と思われるかもしれません。しかし、そこまでしなければ、せっかく接種予約までこぎつけても、結局行き方がわからなかったなどと言って目的を達成できないことになりがちなのも現実です。
役所での手続きを外国人にもわかりやすくすべきだと批判することは簡単です。しかし、未曽有の混乱の中で政府も各自治体も模索しながら対応した今回のような事態において、支援団体や個人のレベルで足りない所を補完する余地がまだまだ多いと実感した今回の事態です。
カトリック東京国際センター 高木健次